女性が輝ける時代へ 女性スポーツが盛んな国の特徴

誰でも自由にスポーツができるようになったいま、女性スポーツでさらなる発展が進んでいます。 古代オリンピックそして近代オリンピックが始まった当初、女性とスポーツは無縁とされてきました。 長い年数をかけて多くの抗議や改革が行われ、2024年パリオリンピックでは史上初めて男性と女性の選手数が同じになりました。 しかし、国によっては女性スポーツの実施率が低い国もあり、国同士の間で差が出来ているのが現状です。 今回は女性スポ―ツが盛んな国を例に挙げ、その特徴を歴史や文化、社会的背景に焦点を当てながら解説していきます。

女性スポーツの歴史

オリンピック

女性がオリンピックに初めて参加したのは、1900年パリオリンピックでした。しかし、女性が参加できたのはテニスとゴルフの2種目で参加者は全体の2.2%でした。1904年セントルイス、1908年ロンドン、1912年ストックホルムオリンピックでアーチェリー、フィギュアスケート、水泳が追加されました。当時、女性らしいとみなされた競技が女性種目として認められていました。
引用元:https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2021/55011

1976年モントリオールオリンピックで、女性参加者が初めて全体の50%を超え、徐々に女性スポーツが発展してきました。そして、2012年ロンドンオリンピックで女子ボクシングが加わり、全競技で女性選手が出場可能となりました。さらに、全参加国・地域から女性選手が派遣され、世界的にも女性スポーツが盛んになりました。

取り組み

1994年に初めて女性スポーツに関する国際会議として「第1回世界女性スポーツ会議」が開催されました。政府機関や各国のオリンピック連盟参加のもと行われ「ブライトン宣言」が採択されました。この宣言では、女性スポーツの参加をあらゆる面で推進していくことを目標としました。
2014年にフィンランドで開催された「第6回世界女性スポーツ会議」でブライトン宣言が改訂・更新され「ブライトン・プラス・ヘルシンキ宣言」として採択されました。スポーツ分野での女性の参加促進だけでなく、意思決定相への登用やリーダー育成を世界に呼びかけました。

日本では2001年に「第1回アジア女性スポーツ会議」が開催され、女性とスポーツの発展のためにアジア内で結束することを確認しました。

2025年6月には、国際オリンピック委員会(IOC)で最年少、初めてのアフリカ出身そして女性の会長が就任しました。新たに就任したカースティ・コベントリー氏はアフリカのジンバブエ出身の水泳選手です。IOCの会長そして2児の母という新時代のリーダーそのものとして注目されています。コベントリー氏は女性スポーツ不平等に対して声を上げ続けてきたひとりの選手です。今回の会長就任を通して、キャリアを続けるか母親になるかを選ぶ必要がないこと、両方することができ周りにサポートがあることを、若い女性に見せていく姿勢を示しています。
新たなリーダーの誕生により、女性スポーツに対する考えが変わり、さらなる支援やサポートが増えることが期待できます。
引用元:https://gendai.media/articles/-/161759?page=1

女性スポーツが盛んな国

女性スポーツが盛んな国を3つ挙げ、人気スポーツやスポーツへの参加度など国内の状況について紹介していきます。

アメリカ

スポーツ大国と言えばアメリカと考える方も多いのではないでしょうか。
実際、アメリカは世界ランキングが上位の種目が多く、ざまざまな競技で成績を残しています。バスケは世界ランク1位、オリンピック8回連続金メダルという圧倒的な強さを誇ります。また、サッカーでは世界ランク2位で2024年パリオリンピックで金メダルを獲得しました。個人種目では、陸上、テニス、体操などで成績を残しており、スポーツ全般で女性選手が活躍しています。ウィンタースポーツも強くアイスホッケーやスノーボードでも成績を残しています。

アメリカの女性スポーツリーグでは、WNBA(バスケ)、NWSL(サッカー)、LOVB(バレー)、AUSL(ソフトボール)、PWHL(アイスホッケー)などがあり、最近新設されたリーグも少なくありません。日本人選手も含め多くのスポーツ選手の夢の舞台となっています。
また、全米大学体育協会(NCAA)は世界最大の大学スポーツ協会であり世界各国からトップを目指して選手が集まります。種目数は23種目、学生アスリートの数は約55万人でそのうち約23万5千人が女性アスリートであるという統計データがあります。

最近では、レスリングなど格闘技に取り組む女性も増えており、多種多様な種目が行われています。
さらに、学生はシーズンごとに種目を変えたり複数のクラブに所属することができるためスポーツに触れる機会が多くなっています。

さらにアメリカでは、ジム文化・フィットネス文化も盛んであり、一般の人もスポーツに取り組んでいます。
最近は、ピラティスやヨガなどのエクササイズも人気ですが、クロスフィットやグループフィットネスといった他者と競い合う環境でのトレーニングが人気です。トレーニングを「イベント」として捉えるため、特にライブ会場のように盛り上がるプログラムが人気です
また、アメリカの医療費はとても高額であると言われています。そのため、日頃から健康を維持することで高額な医療費を避けることができるという考えもあります。

フランス

フランスといえば「ツールドフランス」が有名ですがフランスではほかにも、バスケ、サッカー、柔道、フェンシングなどが盛んに行われています。
バスケは世界ランク3位、サッカーは世界ランク6位、ラグビーは世界ランク4位とメジャースポーツで強豪国です。
サッカーでは、パリ・サンジェルマンやオリンピック・リヨンといった強豪クラブがあります。

フェンシングはヨーロッパ中世のフランスが発祥だとされています。「身を守る」「名誉を守る」ことを目的として発達してきました。また、騎士道精神のあらわれとして試合開始前後の礼や握手で相手への敬意と公正さを示す礼儀作法も重んじています。
柔道はフランスで盛んに行われており、競技者としてだけでなく教育の場面でも柔道が用いられます。柔道がフランスで盛んになった理由として、柔道の礼儀作法や理念がフェンシングの礼儀作法と理念に似ていたからと考えることができます。現在フランスの柔道人口は日本の4倍といわれ、特に12歳以下の子どもが多く道徳の一環として子供に柔道を習わせるという考えがあります。また、護身術としても柔道が盛んに行われています。

フランスで自転車競技が盛んになった理由として、広大な土地と世界遺産が随所にあり、巡礼のように各地を旅する魅力があるためです。2022年に女性版ツールドフランスが復活し、さらに注目を集めています。
さらにフランスで自転車が一般にも広まった背景は、3週間の大規模ストライキです。1995年にストライキが起き、その間公共交通機関が完全に麻痺しました。そのため、市民は移動手段がなくなり自転車に乗り始めました。そして、今では800kmにも及ぶ自転車専用レーンが設置されたり、駐輪場を増加したりし自転車の街を作りあげてきました。

フランス、世界の女性スポーツの先駆者と言われている人物がアリス・ミリアです。アリスは第1回パリオリンピックが開催される2年前に、第1回女子五輪大会を開催しその後も女性スポーツの発展に尽力してきました。そして、2016年に「アリス・ミリア財団」が設立され女性スポーツに貢献しています。
また、2017年にスポーツ大臣と男女平等大臣が共同で常設の諮問機関を設置し、すべてのカテゴリーにおいて女性スポーツ参加促進、メディア報道のあり方、責任あるポストへのアクセス、女性スポーツ関連産業の促進などについての提言を提出しました。2024年パリオリンピックのレガシーとして女性スポーツの促進が期待されています。フランスの国の基礎、自由・平等・友愛に代表される「共和国の価値観」がスポーツでも求められています。

オーストラリア

オーストラリアでは、自然を利用したスポーツが盛んに行われ、他にもラグビーやバスケが世界的にも強い国です。また、イギリスの植民地時代の背景からイギリス文化が多くみられます。
バスケは世界ランク2位でパリオリンピックでは銅メダルを獲得しました。

AFLW(オーストラリアンフットボール)、WBBL(サッカー)など様々な女子リーグでプロ化が進んでいます。
特に、女性のなかで人気なのが「ネットボール」と言われる選手同士の激しい接触がない、アレンジされたバスケです。ネットボールはドリブル禁止というルールがあり、全員でゴールまで協力しなければなりません。そのため、教育現場で広く取り入れられてきました。
ネットボールはイギリスから持ち込まれたスポーツです。他にも、クリケットやサッカーもイギリスから持ち込まれ、オーストラリアで盛んに行われています。

オーストラリアは、ビーチ文化が根付いています。そのため水泳は日常的なスポーツとして性別・年齢関係なく親しまれているスポーツです。また、海を使ったサーフィン人気で、プロやアマチュア、趣味など様々なカテゴリーで行われています。また、ビーチ沿いには歩道が整備されておりウォーキングやジョギングなども盛んに行われています。

また、オーストラリアでは朝に活動をする習慣があり、仕事前や家族が起きる前にランニングやジムに行く習慣があります。そのため日常的に気軽に行えるスポーツが人気で、自然に囲まれたなかで行うヨガは世界から注目を集めています。

オーストラリアは、トップレベルの女子アスリートへの医・科学支援が充実しており、オーストラリアスポーツ研究所では、女性アスリートの心身の健康と競技パフォーマンスのバランスが取れた支援のため、女性アスリートを含むアドバイザーチームが結成され、アスリート本人だけでなく、保護者や現場スタッフの支援に加え、摂食障害を防ぐ取組などが行われています。
また、オーストラリア政府は2023年に、女性スポーツを振興する助成金プログラム「Play Our Way」を発表するなど、大規模な政府助成金が実施されました。他にも、公共スポーツ施設に女性更衣室の整備や女性スポーツキャスターの育成などに助成を行ったり、ユニフォームの選択肢を増やしたりと女性スポーツの発展に尽力しています。また、2032年のブリスベンオリンピックでは女性スポーツの振興が期待されています。

引用元:https://www.skysports.com/netball/news/12415/12767581/netball-is-ever-evolving-australia-embraces-inclusive-uniform-choices

女性スポーツが盛んな国の特徴

アメリカ、フランス、オーストラリアで女性スポーツが盛んな理由にはどのような特徴があるのでしょうか。
いくつかの視点から考えていきます。

文化的背景

アメリカでは、小さいころから多様なスポーツに触れる機会が多くあること、トップレベルのリーグが存在していることが国民のスポーツ意欲を挙げていると考えることができます。フランスでは礼儀作法や道徳など人間性を重視しており、それを成長することができるフェンシングや柔道が盛んに行われています。さらに、オリンピックなど歴史的な大会の開催されることで国民のスポーツへの関心が高まると考えられます。オーストラリアではビーチ文化に根付いた水泳が日常的に行われ、サッカーやクリケットなどイギリスのから持ち込まれたスポーツも盛んに行われています。

国によって違った文化的背景があり、それぞれの目的があって文化に馴染んだスポーツに取り組んでいることがわかりました。

政治的背景

アメリカでは、国が医療への負担や制限を行わず自由診療のため各病院が医療費を決めるシステムになっています。そのため、医療が州や地域ごとに違ったり、救急車が有料だったりと国民に大きな負担がかかります。そこで日頃から健康管理をすることで高額な医療費を避けることができるため、アメリカでは多くの人がスポーツに励んでいます。また、高等教育機関での男女平等を定めた法律「タイトル・ナイン」により、学生スポーツに取り組む女性の数は増えました。フランスでは、公共交通機関のストライキを機に自転車を使う人が増えました。公共交通機関の負担を減らし、自転車も快適に乗れるように専用レーンを設けました。さらに自転車購入の補助金など国が自転車を推奨しています。また、スポーツでの男女平等を促進する様々な会議に出席したり、条約を制定したり国内における女性スポーツでの女性の活躍を進めていく姿勢を示しています。オーストラリアでは、公共施設での女性スポーツの促進や、各州政府での取り組みなどで女性スポーツの支援を行っています。

女性スポーツが盛んな国では、女性スポーツに対する政策や取組などが充実していることが分かります。また、オリンピックや女性のワールドカップなど大規模な大会が開催されることがその国や政府での女性スポーツに対する意識の変化のきっかけになるということが考えられます。

ワークライフバランス

アメリカ、フランス、オーストラリアでは育児や家事を分担して行う考え方や、ベビーシッターを雇って親の時間を作るという考え方があります。そのため、女性が育児や家事だけをするという概念がないため自分の時間を作りやすくなっています。また、仕事では実力主義の効率の良い仕事で時間内に仕事を終わらせ、自分の時間を作るという考えが主流です。スポーツを行う時間を作ることができるということが共通点として挙げられるのではないでしょうか。

日本の現状

トップリーグ

近年、WEリーグ(サッカー)、SVリーグ(バレー)が女子のプロリーグとして設立されましたが注目度やメディア露出は多くなく、他の競技やアマチュアスポーツにおいても男性の人気が多いのが現在の日本の現状です。

国際大会での活躍が乏しかったり、リーグの顔となるような選手がいなかったりすることが原因であると考えられます。
そのため、女性スポーツの強化のための支援や政策がさらに必要になると考えます。

最近では、海外リーグに挑戦する選手が増えたり、出産や育児後の復帰支援などの環境整備が拡大したりなど、キャリアの選択肢が増えてきています。

教育

日本ではアメリカやフランスとは対照的に、ひとつの物事に専念することが美とされる文化です。そのため、学校の部活動では一つの部活動に所属し専念しなければならないという考えが主流です。エリート教育だけでなく生涯にわたってスポーツに取り組めるような環境が必要とされています。

近年では、部活動の地域移行化が進み中でも地域総合型スポーツクラブでは一つの種目に絞らず様々な種目を行うことができます。
年齢に関わらず、気軽に参加できるスポーツの場を提供していく必要があります。

ワークライフバランス

日本では、家事・育児は女性がおこなうものという考えが海外よりも強くあります。そのため、女性が自分のために使える時間が少ないです。
さらに、サービス残業など仕事に時間を多く費やしてしまう人も少なくないでしょう。
自分時間を大切にする考えや、制度が必要になってくると考えられます。

まとめ

いかがでしょうか。女性スポーツには長い歴史と先人たちの努力があり、現在の女性スポーツが存在しています。

女性スポーツが盛んな国では、歴史的背景や社会的背景、文化などが複合的に交わり女性スポーツを盛んにしていると考えられます。
また、ある程度の経済力がスポーツ環境を整える上で必要となるため、国の間での差が大きくなることが今後の課題として挙げられます。
「する、みる、ささえる」スポーツに関わる全ての方法で、女性スポーツが発展していくことを期待したいと思います。







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