あなたの応援がCO2を減らすーースポーツ観戦とサステナビリティ

近年の夏は、本当に危険な暑さが続いていますよね。 この異常な気温の高さは、「地球温暖化」が原因です。 地球温暖化は、人間の活動によりCO2などの「温室効果ガス」が増加し、地球全体の平均気温が上昇する現象です。 この現象により気温上昇のみならず、異常気象の頻発や海面上昇、病気の増加などが引き起こされる可能性があり世界中で「CO2削減」の取り組みが行われています。 今回は、国内外のスポーツチームが行う「CO2削減への取り組み」についてご紹介していきます!!

1.スポーツが生むCO2はどこから出ているのか

そもそもスポーツは環境問題にどのような影響を与えているのでしょうか。
分野ごとにみていきましょう。

観客や選手の移動

多くの分野がある中でも、観客や選手の移動手段である航空機や車などの移動手段中のCO2排出量が一番多いと言われています。
スポーツで排出されるCO2は、約50〜85%が移動起因のものです。

施設運営

施設運営の中で考えられるCO2排出要因としては、照明(特にナイトゲームや室内競技)、空調などが考えられます。

ゴミの排出

試合会場で発生するゴミ問題も間接的にCO2排出に繋がります。
特に多くの観客が訪れる大規模な試合会場では、大量のゴミが排出されたり、ごみの分別が行われないなどが原因となり環境に影響を与えてしまうのです。

また近年ではゴミ問題に加え、観戦中のフードロスやプラスチックドリンクカップの使用も問題視されています。

ユニフォームやグッズなどの製造過程

スポーツで利用される衣類には、吸湿速乾などの機能性が求められます。

機能性を重視したものは石油やポリエステル、プラスチック素材が多く使用されていますので、選手や観客が試合を楽しむためには必要不可欠なユニフォームやグッズは、製造過程の中で多くのCO2を排出しているのです。

2.世界のプロスポーツの取り組み

1. Desert Vipers (ドバイ)


デザートバイパーズ はアラブ首長国連邦のドバイを本拠としたプロクリケットチームです。
バイパーズは、「地域に根ざした団体や企業の支援」と「持続可能なキット(ユニフォーム)の使用」をCO2削減するための取り組みとして行っています。

「地域に根ざした団体や企業の支援」は、地元の団体や企業を支援することにより、試合に必要な機材等の移動に伴うCO2排出量が約8%削減されており、バイパーズの所属する地域ではCO2排出量を約60%削減することができています。

また、選手やサポートスタッフが着用するユニフォームは、完全リサイクル素材になっておりCO2排出量を約50%削減しました。
ユニフォームを提携している「Palm Fit」は、地元のメーカーであるため上記の地域に根ざした活動にも当てはまります。

さらに、今シーズンからは配送に通常使用される使い捨てプラスチック包装は一切使用せず包装材の使用が削減されたので、
様々な分野で環境に大きなプラス効果を生み出していると言えるでしょう、

2. Seattle Kraken (アメリカ合衆国)

シアトル・クラーケンは、アメリカ合衆国ワシントン州シアトルを本拠としているナショナルホッケーリーグ所属のプロアイスホッケーチームですが、チームの取り組みではなく、チームが使用するアリーナの取り組みについてご紹介していきます。

シアトル・クラーケンの本拠地である「CLIMATE  PLEGE ARENA(クライメート・プレッジ・アリーナ)」は積極的な環境問題への取り組みを行っています。

アリーナでは特に、「ゼロカーボン」や「廃棄物ゼロ」、「節水」などのなかで特に「ゼロカーボン」への取り組みに力を入れているようです。
エンタメ界では初めて、地球温暖化対策への貢献を示す「ゼロカーボン認証」を取得しています。

カーボンゼロの取り組みの中では、化石燃料を使用せず施設内の調理、空調、整氷車まで全ての設備が電化されています。
それらを運用するための電気は、アリーナや練習施設の屋根上に取り付けられたオンサイト太陽光から供給しており、不足分は近隣から調達しています。

また、試合チケットを持つ観客は電化されたモノレール等の公共交通機関を無料での使用を許可されており、移動手段で発生するCO2への配慮も抜かりないですね。

こちらは余談ですが、実はこのアリーナ名は世界最大級のECOサイトを運営しているアマゾンが名付けました。
通常は、PR目的で企業名や、商品名をアリーナ名につけるものですが、環境問題への配慮を目的にアマゾンは企業名を”あえて”つけなかったそうです。

以後、アリーナでイベントを行うアーティスト等の使用者は当たり前のように環境に配慮したイベントを行うようになったそうです。

3. Paris Saint-Germain (フランス)

パリ・サンジェルマンFCは、フランス・パリに本拠地を置くプロサッカークラブです。
今回は、パリ・サンジェルマンFCのユニフォームに注目してみました。


Nikeデザインの2025-2026シーズンで使用されるユニフォームは、環境に配慮したサステナブル素材が使用されています。

リサイクルポリエステルを使用したNike製品は、廃棄されたペットボトルが原料となる新しい高品質の糸を使用して、性能と環境への配慮を兼ね備えた製品です。

リサイクルポリエステルによって無駄を減らせるだけでなく、未使用のポリエステルと比較してカーボン排出量を最大30%削減できます。

環境に優しいユニフォームを選手達が着用することで、ファン層への啓発効果も期待できます。

4. Boston Red Sox (アメリカ)

ボストン・レッドソックスは、アメリカマサチューセッツ洲ボストンに本拠地を置きメジャーリーグに所属しているプロ野球チームです。

レッドソックスは、2008年にメジャーリーグで初めて球場に太陽パネルを設置しました。ホームベース後方の屋根に設置された28枚のパネルは、年間18トンのCO2排出量を削減しています。

近年では、球場の電力消費量のすべてをGreen-e認証の再生可能エネルギーに変換したので今後は、今後はすべての電力を風力と太陽光発電で供給します。

メジャーリーグの中でも、早くから環境問題に取り組んでいたレッドソックスは近年も積極的な取り組みを行っています!

5. Atlanta Hawks (アメリカ)

アトランタ・ホークスは、アメリカジョージア州アトランタに本拠を置くNBAのプロバスケットボールチームです。

2021年5月以降、ホークスがホームアリーナとしている「ステートファーム・アリーナ」ではファンが生み出す廃棄物の少なくとも90%を再利用し、埋め立て処理を回避しています。

2023年には、削減、再利用、リサイクル等を通じて300万ポンド(136万キログラム)以上のゴミを削減しました。

3.日本のプロスポーツの取組み

1. 横浜FC

横浜FCは地域とのつながりをとても大切にしており、地域と協力し日頃から多くのイベントを開催しています。

2025年7月4日には、西寺尾小学校とSDGsの取り組みが始まったようです。
横浜FCは自分たちが作るお弁当で地域の人を幸せにしたいという小学生の思いに賛同し、「SAF(持続可能な航空燃料)」テーマに活動しています。

その活動の中で、横浜FCクラブスタッフは学校を訪問し、横浜FCの地域への思いや環境に関する取り組み、そして活動テーマである「SAF」について授業で紹介しています。

※SAF(Sustainable Aviation Fuel)とは、持続可能な航空燃料のことで、廃食油や植物油、紙ゴミなどを燃料とし航空機から排出されるCO2の排出を約8割も削減できる、近年注目されている航空燃料です。

2. 埼玉西武ライオンズ

株式会社西武ライオンズは、持続可能な社会を目指し、脱炭素社会の実現に向けて東京電力エナジーパートナーの「再エネ起業応援プラン」に2024年7月1日から参加し、ベルーナドームで開催するプロ野球公式戦やコンサートなどのイベントで使用される電力相当量分のCO2の排出量を実質ゼロにする取り組みを開始しています。

この取り組みは、ご家庭のソーラーパネルなどで生み出された余剰電力等を、西武ライオンズが買い取り、ベルーナドームで使用される電力へ活用するというものです。

西武ライオンズは、CO2排出量の目標数値を定め2050年度までに実質ゼロにすることを目指しています。

3. 阪神タイガース

阪神タイガースは阪神甲子園球場と「KOSHIEN "eco" challenge」の一環として、空調機の稼働などでCO2排出量が多くなる7月の試合を「カーボンオフセット試合」として設定し、実施するものです。

阪神甲子園球場は、今年度から「電気使用における実質再エネ100%」を実現していますが、試合日には、ガス・水道の消費や廃棄物の処理に伴うCO2が排出されるため、「カーボンオフセット試合」を通じて、脱炭素とゴミの削減にファンの方々に呼びかけに取り組んでいるようです。

この取り組みは今年で5回目の開催です。

4. 秋田ノーザンハピネッツ

秋田県内で、幅広いファン層を持つ秋田ノーザンハピネッツと秋田県が連携したプロモーションを実施しています。
2024-2025シーズンが「ゼロカーボンチャレンジシーズン」と設定されています。

「ゼロカーボンチャレンジシーズン」内では、3つのプロジェクトが実施されました。

プロジェクト1. 「GO!  ゼロカーボンゲーム」

このプロジェクトのメイン企画です!
秋田ノーザンハピネッツのホームコートであるCNAアリーナ☆あきたで行われる試合日の中で、脱炭素につながる様々な取り組みをアリーナ内に特設ブースを設置するなどしてPRしています。

プロジェクト2. 「TRY! ゼロカーボンアクション」

スマホアプリ「あきエコどんどんプロジェクト」とのコラボ企画です。
アプリ内で、レジ袋の不使用やリサイクルボックスの利用などでエコポイントを貯めて、抽選に参加できるというプロジェクトです。
県内の協力店に加え、秋田ノーザンハピネッツのゲーム会場でもエコポイントを稼げる仕組みになっています。

ゲーム感覚で楽しんでもらえるようなプロジェクトで、ファンの方々も参加しやすいですね。

プロジェクト3. 「DO! カーボン・オフセット」

秋田県内の森林整備により創出された環境価値を活用し、ホームゲーム会場の電気使用相当する二酸化炭素の「カーボンオフセット」に、シーズンを通して取り組んでいました。

「カーボン・オフセット」とは、ホームゲーム会場内で削減しきれなかった排出量分を他の場所で行われた温室効果ガスの削減活動を購入することなどで、「埋め合わせる」考え方や取り組みのことです。

これらの取り組みで、秋田ノーザンハピネッツはファンと一体となってCO2削減に向けた展開をしています。

5. 静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズは、脱炭素経営を掲げており、カーボン・オフセット付きのチケット販売などを行っています。
また、試合観戦に来る来場者の課題として、来場者の約45%が自家用車を使用し、最大3000台以上がスタジアムに集まることから、交通渋滞や、環境負荷が挙げられました。

解決策として、アプリ内で移動手段に応じたマイル付与を行い、観客ができるだけ環境負荷の少ない交通手段を利用するよう呼びかけました。
付与されたマイルは、選手のサイン入りグッズや試合後イベントの抽選参加券などと交換することができます。

その取組結果として2025年1月から5月末までにアプリ参加者によって約172万gのCO2が削減されたという結果となりました。

また、3月2日の試合では、自家用車の利用率が実験前と比較して約17%減少し、アンケートでは68%の来場者が移動手段に変化があったと回答しています。

次シーズンにおいてもこの取組結果をもとに、CO2排出量削減につながる取り組みを継続していくそうです。

4.ファンでもできるアクションとは

移動の工夫

スポーツ観戦の移動手段で車を使用している方は、公共交通機関や自動車でスタジアムやアリーナに行くことで大幅なCO2削減に繋がります。

また、車のみならず遠方の試合のために利用する飛行機はスポーツ由来CO2の中でも最大の要因になるので、できるだけ近場な試合の選択を心がけましょう。

観戦中の行動の見直し

まずは、1試合で何万個も発生す使い捨てカップ削減するためにもリユースカップやマイボトルを使用しましょう。
また、観戦中で発生したゴミを正しく分別するだけでも、環境問題改善に一歩近づきます。

観戦中に食事をする方も多いと思うのですが、食事の選び方でも環境問題の改善にすることができます。
特に、植物由来のものや地元産のものを選択すると良いでしょう。

応援グッズやチーム・リーグの活動の後押し

応援するためのユニフォームやグッズは、毎年買い替えるよりも1つのものを長く使用することでユニフォームやグッズ作成時に発生するCO2の削減に貢献することができます。

さらに、今回紹介したチームや以外にも多くのチームやリーグは環境問題改善のための取り組みを行っています。
ご自身が応援しているチームの活動をチェックし、すこしでも貢献できるよう意識してみましょう。

ファンの声がスポンサーやリーグ、チームの方針に影響を与えることが多いです。
実際にファンの声から環境問題改善に向けた活動がスタートした事例もあるので、積極的に参加してみましょう。

5.今後注目される「スポーツ×サステナビリティ」分野

カーボンニュートラルなスタジアム


今回紹介したチームの取組にも名前は出てきましたが、100%再生可能エネルギーで稼働するアリーナやスタジアムには注目が集まっています。

証明や、空調で多くの電気を使用する為、多くのスタジアムやアリーナではLED化や省エネを進めており、次のステップとして「ゼロカーボンスタジアム」の実現に期待が高まっています。

サステナブルな試合観戦

今回紹介した「静岡ブルーレヴズ」は既に実践していますが、チケット購入時にCO2オフ・セットが自動で含まれる仕組みの導入にも注目が集まっています。

さらに、公共交通機関での来場による特典や、モバイルチケット化で使用する紙を削減するなどサステナブルな取組は様々です。

近年は、ほとんどのチケットはスマートフォンでやり取りされており、余分な紙の使用を防ぐことができています。
モバイルチケットに関しては、環境問題のことを意識せず利用している方が多い印象ですが、「自分自身が環境問題に取り組んでいる」という意識的な行動をしていくことが求められるでしょう。

サステナブルユニフォームと循環型システム

近年、再生ポリエステルや海洋プラスチックなどのサステナブルな素材を使用し、生産過程でも環境配慮をしたユニフォームを着用しているチームは国内外問わず多く存在します。

さらに、「横浜・Fマリノス」の試合では、「レンタルユニフォームサービス」を実施しています。
マリノスは「スタジアムへ初めて観戦しに行くけれど、ユニフォームを持っていないので少し不安」な方へ向けたサービスを発信していますが、視点を変えると一つの同じユニフォームをさいりようしているので多くの方が観戦を楽しむことができ、非常に環境に優しいサービスなのです。

新しいユニフォームの購入を検討している方は、「レンタルサービス」というサービスがあるということを頭に入れておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、国内外のスポーツチームが行うCO2削減のための取り組みについてご紹介しました。

スポーツは人々を熱狂させるだけでなく、大規模な移動や施設運営を通じて多くのCO2を排出しています。
プロスポーツチームの大きな影響力を利用し、環境に優しい取り組みが広がっていくことを願っています。




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